──むかしむかし
この地は人も獣も皆々が去り
神だけが取り残された
それはもう寂れた土地でした
──そんな
人と神との絆が絶えた土地に
我らの祖先はやって来たのです
孤独の神住まう地
人々が住めども
耕せど耕せど
実るものは無し
──そして
人々は神託を仰ぎます
困り果て人々は
巫女の娘頼る
巫女は神に恵乞うて
祈り願い捧ぐ
多くの生命が このままでは
この地を離れた 我らは生きて往けませぬ
この悲しみ苦しみ痛みを 恵得られるならば
そなたに癒せるか? 何でもいたしましょう
温もりを求めて
錆びついた手伸ばす
「その身を捧ぐなら
実りを約束しよう」
──人々は戸惑いました
生きてゆくためとはいえ
巫女を生贄に捧げるのは躊躇われ
嘆き戸惑う声怒る声が交差しました
──そのなかで巫女はひとり
毅然とした態度と凛とした声で
貧困に喘ぐ人々のため
そして孤独な神のため
神の御許へゆくと言ったのです
神の孤独知った
巫女は心決めた
嘆く母なだめただ
約束の時待つ
星の散る夜の宴
彼の世への嫁入り
得られる恵、捧げる贄
悲喜交差する夜
永い年月は あなたの苦しさ寂しさ
冷たい牢獄 私に癒せるのなら
それでもそなたは 百代の時も
この手を取るのか? あなたの側にいましょう
人ならぬモノへの
扉の階を
巫女は駆け上がり
ためらわず手伸ばした
孤独ではないと
伸ばされた巫女の手を
握りしめ咽び泣く
涙は滴った
──そして
絆は再び結ばれる
恵の雨は降る
乾いた地潤し
豊饒の大地で
歓喜の声響いた
絆を縒り結び
2人の手重なる
幾星霜経ても
実りを結ぶように
永久に共にいよう
今でもその地では豊作が続いているという